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本判決の位置づけ

遺産確認の訴えにおける当事者適格について、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと判示しました。

2.事案の概要

(1) Aは土地建物(以下「本件不動産」といいます。)を所有していました。
(2) Aは昭和28年1月26日に死亡しました。
(3) Aの共同相続人であるXらは、同じくAの共同相続人であるYら、Eらを被告として、本件不動産がAの遺産であることの確認を求める訴えを提起しました。
(4) 前記訴訟の係属後、Eらが自己の相続分の全部をそれぞれ他の共同相続人に譲渡していたことが明らかになりました。
(5) そこで、Xらは、Eらに対する訴えを取り下げる手続をしました。
(6) 第1審は、原告らの訴えの取下げによりEらが当事者ではなくなったことを前提に、原告らの請求を棄却する旨の判決をしました。
(7) 控訴審は、自己の相続分の全部を譲渡したEらも共同相続人として遺産確認の訴えの当事者適格を失うものではないとして、Eらに愛する訴えの取下げが効力を生じないことを看過してされた第1審の訴訟手続には違法があると判断し、第1審判決を取り消しました。

判決文(抜粋)

遺産確認の訴えは、その確定判決により特定の財産が遺産分割の対象である財産であるか否かを既判力をもって確定し、これに続く遺産分割審判の手続等において、当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することを目的とする訴えであり、そのため、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟と解されているものである。しかし、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、積極財産と消極財産を包括した遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり、遺産分割審判の手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないのであるから、その者との間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要はないというべきである。そうすると、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと解するのが相当である。

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