死亡届

届出義務者は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡があったときは、その事実を知った日から3ヶ月以内)に、死亡の届出をしなければなりません(戸籍法86条1項)。

死亡届の届出義務者は、(1) 同居の親族、(2) その他の同居者、(3) 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人とされており、この順序に従って義務を負いますが(戸籍法87条1項本文)、いずれの者も、順序にかかわらず、届出をすることはできます(戸籍法87条1項ただし書)。また、死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、補佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、届出をすることができます(戸籍法87条2項)。

届出先は、死亡者の本籍地、届出人の所在地(戸籍法25条1項)又は死亡地(戸籍法88条)の市役所、区役所又は町村役場です。

遺言書の検認

遺言の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません(民法1004条1項前段)。遺言の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見したときも、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、検認を請求しなければなりません(民法1004条1項後段)。
ただし、公正証書による遺言(民法1004条2項)又は法務局に保管されている遺言書(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)については、検認の手続は不要です。

相続放棄又は限定承認

相続人が相続放棄又は限定承認をしようとする場合には、原則として、自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続放棄又は限定承認をする必要があります(民法915条1項本文)。ただし、3ヶ月という期間は、利害関係人等の請求によって、家庭裁判所において伸長することができます(民法915条1項ただし書)。
上記期間内に相続放棄又は限定承認をしなかったときは、相続を単純承認したものとみなされます(民法921条1項2号)。

包括遺贈の放棄又は限定承認

包括遺贈の場合には、包括受遺者は相続人と同一の地位に立つとされることから(民法990条)、相続の承認又は放棄に関する規定(民法915条以下)が適用されます。
したがって、原則として、自己のために包括遺贈があったことを知った時から3ヶ月以内に、放棄又は限定承認をする必要があり(民法915条1項本文)、当該期間内に放棄又は限定承認をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1項2号)。

財産分離

相続債権者又は受遺者の請求による財産分離

相続債権者又は受遺者は、相続人の財産から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができます(民法941条1項前段)。
この相続債権者又は受遺者による財産分離の請求は、原則として相続開始の時から3ヶ月以内にする必要がありますが(民法941条1項前段)、相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、財産分離の請求が認められています(民法941条1項後段)。

相続人の債権者の請求による財産分離

相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができます(民法950条1項)。
この相続人の債権者による財産分離の請求は、相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間にする必要があります(民法950条1項)。

申告と納税

所得税の準確定申告

通常の所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得について、翌年の2月16日から3月15日の間に申告と納税をすることとされています。しかし、年の途中で亡くなられた方については、相続人の方が、1月1日から死亡日までの所得について申告し、納税しなければなりません(準確定申告)。所得税の準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内にする必要があります。

相続税申告

相続や遺贈などによって取得した財産について相続税がかかる場合には、財産を取得した方は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税を申告し、納税する必要があります。

特別寄与料の協議に代わる処分の請求

相続人以外の被相続人の親族が、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたときは、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払いを請求することが認められています(民法1050条1項)。
特別寄与料の支払いについて、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができますが(民法1050条2項本文)、この請求は、特別寄与者が相続の開始を知った時から6ヶ月以内又は相続開始の時から1年以内にする必要があります(民法1050条2項ただし書)。

遺留分侵害額請求

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法1048条前段)。また、相続開始の時から10年を経過したときも、消滅します(民法1048条後段)。

相続回復請求権の消滅時効

相続人でない者が相続人らしく相続財産を占有管理し、真正の相続人の権利を侵害している場合には、真正の相続人は、表見相続人に対して、侵害を排除し、権利の回復を求めることができますが、この相続回復請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法884条前段)。また、相続開始の時から20年を経過したときも、消滅します(民法884条後段)。

期間経過後の遺産分割における相続分

相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、特別受益者の相続分(民法903条904条)及び寄与分(民法904条の2)に関する規定は適用されず、具体的相続分の主張をすることができなくなります(民法904条の3)。