遺産の分割

相続人が複数人いるときには、相続人全員が、遺産を共有します(民法898条)。
共有状態となった遺産を、各共同相続人の単独所有に帰属させるには、「遺産の分割」をすることになります。
相続分については、こちらの記事をご参照ください。
遺産の取り分を計算する – 法定相続分と特別受益・寄与分

遺産の分割を行うには

遺産の分割は、共同相続人の「協議」によって行います(民法907条1項)。
共同相続人間で、協議が調わないとき、または協議をすることができないときには、家庭裁判所に、遺産の分割を請求することができます(民法907条2項)。

a. 遺産分割の協議

共同相続人は、遺言で禁じられた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができます〈民法907条1項)。共同相続人間において協議が成立した場合には、不動産の所有権移転登記等のために、遺産分割協議書を作成することとなります。

b. 遺産分割の調停

(a) 申立て

各共同相続人の他、包括受遺者、相続分譲受人の方も申し立てることができます。

(b) 管轄

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。

(c) 調停の合意の効力

調停において当事者間に合意が成立し、その合意を調停調書に記載すると、調停は成立します。そして、調停調書の記載は、確定した審判と同一の効力を有することになります(家事事件手続法268条)。

c. 審判の手続

(a) 申立て

各共同相続人の他、包括受遺者、相続分譲受人の方も申し立てることができます。

(b) 管轄

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法191条1項)。

(c) 審判の基準
  • 遺産に属する物または権利の種類および性質
  • 年齢
  • 職業
  • 心身の状態
  • 生活の状況
  • その他一切の事情

を考慮して分割を行うことになります(民法906条)。

(d) 審判の確定と効力

遺産分割審判は、即時抗告期間(2週間)の経過によって確定し、効力を生じます(家事事件手続法74条、86条、198条)。給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有します(家事事件手続法75条)。

分割の方法

以下のような方法があります。

・現物分割
遺産を構成する個々の財産を配分する方法です。
・換価分割
遺産を金銭に換価して分割する方法です。
・代償分割
遺産の現物を特定の相続人に取得させ、その取得者に、他の相続人に対して債務を負担させるという方法です。

遺産分割の効果

民法は、「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる」と定めています(民法909条本文)。

遡及効

「さかのぼってその効力を生ずる」というのは、各相続人が被相続人から直接財産を取得したものと扱われるという意味であり、これを「遡及効」といいます。

第三者の保護

しかし、遡及効を無制限に認めると、第三者の権利が害される可能性があります。たとえば、遺産の分割前に共同相続人の1人から遺産に属する財産の持分の譲渡を受けた場合、譲受人は、無権利者から譲り受けたこととなってしまいます。
そこで、利害関係を有する第三者の権利を保護する規定が設けられています(民法909条但書)。すなわち、遺産分割前に共同相続人の1人から遺産に属する財産の譲渡と受けたあとで、共同相続人間において、当該遺産を別の共同相続人に取得させる遺産分割協議が行われたとしても、遺産分割協議前に譲り受けた第三者は有効に遺産に属する財産を取得できることとなります。

関連条文

民法907条
  1. 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
  2. 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
  3. 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
民法906条
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
民法909条
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。