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本判決の位置づけ

商法法(平成17年法律第87号による改正前のもの。)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は、民法所定の年5分である、また取締役の会社に対する損害賠償債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るという判断を示しました。

事案の概要

株式会社Aの株主であるXが、同社の取締役であったYらに対し、Yらの忠実義務違反及び善管注意義務違反によりAが損害を被ったと主張して、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。)267条3項に基づき、損害賠償金及びこれに対する商事法定利率年6分の割合による遅延損害金をAに支払うことを求めました。

判決文(抜粋)

商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は、取締役がその任務を懈怠して会社に損害を被らせることによって生ずる債務不履行責任であるが、法によってその内容が加重された特殊な責任であって、商行為たる委任契約上の債務が単にその態様を変じたにすぎないものということはできない。そうすると、同号に基づく損害賠償債務は、商行為によって生じた債務又はこれに準ずるものと解することはできない。
したがって、商法266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は、民法所定の年5分と解するのが相当である。
また、以上に説示したところによれば、商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は、期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当である。

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