本判決の位置づけ
無委託保証人が主たる債務者の破産手続開始前に締結した保証契約に基づいて破産手続開始後に弁済をした場合に保証人が主たる債務者である破産者に対して取得する求償債権は破産債権であるとしたうえで、当該求償権を自働債権として、破産者が保証人に対して有する債権を受動債権とする相殺は、許されないと判示したものです。
事案の概要
Aらは、銀行業を営む会社であるYとの間で、それぞれ当座勘定取引契約を締結しました。
Yは、Aらの委託を受けないで、Aらの取引先であるG商事株式会社との間で、G商事に対して負担する買掛債務及び手形債務につき、極度額を定めてそれぞれ保証する旨の保証契約を締結しました。
Aらは、破産手続開始の決定を受けました。
Yは、本件各保証債務の履行として、G商事に対し、債務をそれぞれ弁済しました。
Aらの破産管財人は、各当座勘定取引契約を解約しました。
Yは、弁済により取得した求償権と、当座勘定取引契約に基づいてAらがYに対して有する債権とをそれぞれ対当額において相殺する旨の意思表示をしました。
判決文(抜粋)
無委託保証人が主たる債務者の破産手続開始前に締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が主たる債務者である破産者に対して取得する求償権は,破産債権であると解するのが相当である。
無委託保証人が主たる債務者の破産手続開始前に締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が取得する求償権を自働債権とし,主たる債務者である破産者が保証人に対して有する債権を受働債権とする相殺は,破産法72条1項1号の類推適用により許されないと解するのが相当である。