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本判決の位置づけ

破産者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付した行為が、破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たると判示したものです。

事案の概要

Aは、弁護士法人に対して債務整理を委任し、弁護士らがAの代理人として、Aに金銭を貸し付けていた債権者一般に対し、債務整理開始通知を送付しました。
当該通知には、「当職らは債務者から依頼を受け、同人の債務整理の任に当たることになりました。」「今後、債務者や家族、保証人への連絡や取立行為は中止願います。」などと記載されていました。
Aは、一部の債権者に対して合計17万円を弁済しました。
その後、Aは、破産手続開始の決定を受けました。
破産管財人は、破産法162条1項1号の規定により否認権を行使して、弁済を受けた債権者に対して弁済金相当額等の支払いを求めました。

判決文(抜粋)

本件通知には,債務者であるAが,自らの債務の支払の猶予又は減免等についての事務である債務整理を,法律事務の専門家である弁護士らに委任した旨の記載がされており,また,Aの代理人である当該弁護士らが,債権者一般に宛てて債務者等への連絡及び取立て行為の中止を求めるなどAの債務につき統一的かつ公平な弁済を図ろうとしている旨をうかがわせる記載がされていたというのである。そして,Aが単なる給与所得者であり広く事業を営む者ではないという本件の事情を考慮すると,上記各記載のある本件通知には,Aが自己破産を予定している旨が明示されていなくても,Aが支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないことが,少なくとも黙示的に外部に表示されているとみるのが相当である。
 そうすると,Aの代理人である本件弁護士らが債権者一般に対して本件通知を送付した行為は,破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たるというべきである。