本判決の位置づけ
免責許可の決定が確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されない、と判断しました。
事案の概要
(1) Yについて破産手続終結の決定がされ、免責許可の決定が確定しました。
(2) Yに対して確定した破産債権を有するXが、当該破産債権は破産法253条1項2号に掲げる請求権に該当すると主張して、Yに対し、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起しました。
(3) 原審は、破産債権者表に記載された確定した破産債権が破産法253条1項各号に掲げる請求権(以下「非免責債権」といいます。)に該当するか否かは、執行文付与の訴えの審理の対象にはならないとして、訴えは不適法であり却下すべきものとしました。
判決文(抜粋)
民事執行法33条1項は、その規定の文言に照らすと、執行文付与の訴えにおける審理の対象を、請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合におけるその事実の到来の有無又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることの可否に限っており、破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かを審理することを予定していないものと解される。このように解しても、破産事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官は、破産債権者表に免責許可の決定が確定した旨の記載がされている場合であっても、破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるときには、民事執行法26条の規定により執行文を付与することができるのであるから、上記破産債権を有する債権者には殊更支障が生ずることはないといえる。
そうすると、免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されないと解するのが相当である。
判決文の全文はこちら。
裁判例情報 | 裁判所ウェブサイト
関連条文
- 破産法第253条
- 免責許可の決定が確定したときは、破産債権者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 民事執行法第26条
-
- 執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
- 執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
- 民事執行法第27条
-
- 請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
- 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
- 民事執行法第33条
- 第27条第1項又は第2項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第3項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。