民法第423条の3
債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正によって、新設された規定です。

改正前民法下においては、明文の規定はなかったものの、判例によって、第三債務者より代位行使をした債権者自身に金銭を給付すべき旨を請求することが認められていました(大審院昭和10年3月12日第二民事部判決)。改正法では、この判例法理が明文化されました。

なお、上記判例法理によれば、金銭の引渡しにおいては、債権者は自己の債権と相殺することにより、代位債権者が優先弁済を受ける結果となることが問題として指摘されていました。法制審議会民法(債権関係)部会における議論では、代位債権者による直接の引渡請求自体を否定するという案や、代位債権者による直接の引渡請求を認めた上で相殺を禁止するという案が提示されました(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案』)。
しかし、債権者代位権による事実上の債権回収は、債務名義を取得して強制執行制度を利用すると費用倒れになるような場面において、強制執行制度を補完する役割を果たしている等の指摘があり、従来の判例の結論が維持されることとなりました(部会資料73A)。

条文の位置付け