民法第176条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

条文の趣旨と解説

物権変動は当事者の意思表示のみによって生じますが(民法176条)、本条は、不動産に関する物権の変動については、登記をしなければ第三者に対抗することはできないとしています。これにより、取引をしようとする第三者の立場からすれば、登記上に記載されていない物権変動は存在しないものとして、無視して行動することができ、取引の安全が保障され、取引の迅速化が図られることになります。

登記を要する物権変動

判例は、意思表示による物権変動に限定することなく、すべての不動産に関する物権変動について、登記しなければ第三者に対抗することはできないとしています(大審院明治41年12月15日連合部判決・大審院民事判決録14輯1301頁)。

登記をしなければ対抗できない第三者

判例は、本条の「第三者」の意義について、当事者及びその包括承継人以外の者であって、不動産に関する物権の得喪及び変更の登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者をいうとしています(大審院明治41年12月15日連合部判決・大審院民事判決録14輯1276頁)。
第三者の善意・悪意は問わないものの、実体上物権変動があった事実を知る者において右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって、民法177条にいう第三者に当らない、とされています(最高裁昭和43年8月2日第二小法廷判決等)。

条文の位置付け