- 民法第176条
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- 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
- 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
- 前二項の規定は、占有権については、適用しない。
条文の趣旨と解説
併存させておく必要のない二つの法律上の地位が同一人に帰属することを混同といいます。混同は権利の消滅原因の一つです。
本条は物権の混同について定め、債権の混同については民法520条に規定があります。
所有権と制限物権が同一人に帰属したときは、制限物権は消滅します(本条1項本文)。ただし、その物又は制限物権が第三者の権利の目的であるときは、消滅しません(本条1項ただし書)。
判例は、土地の所有権と賃借権とが同一人に帰属した場合につき、「その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件を具備した後に右土地に抵当権が設定されていたときは、民法179条1項但書の準用により、賃借権は消滅しないものと解すべき」と判示しています(最高裁昭和46年10月14日第一小法廷判決)
制限物権とこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利が消滅します(本条2項前段)。ただし、制限物権又はこれを目的とする他の権利が第三者の権利の目的であるときは、消滅しません(本条2項後段)。
占有権は混同により消滅することはありません(本条3項)。