民法第264条の14
  1. 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第3項に規定する管理不全建物管理人をいう。第4項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。
  2. 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象された建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
  3. 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。
  4. 第264条の10から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

条文の趣旨と解説

令和3年民法・不動産法改正により、管理不全建物管理制度が創設されました。管理不全土地管理制度とは別に、管理不全建物管理制度が独立して設けられた理由は、土地の所有者と建物の所有者が異なるケースにも対応するためと説明されています(法制審議会民法・不動産登記法部会『部会資料50』)。

裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理命令をすることができます(本条1項)。

借地上にある管理不全建物について管理不全建物管理命令が発せられた場合に建物の適切な管理に支障を来さないようにするため、管理不全建物管理命令の効力は、当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利にも及ぶものとされています(本条2項)。

管理不全土地管理制度に関する規定(264条の10から264条の13)は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用されます(本条5項)。

条文の位置付け