借地借家法第10条
  1. 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
  2. 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
建物保護ニ関スル法律(旧法)第1条
建物ノ所有ヲ目的トスル地上権又ハ土地ノ賃借権ニ因リ地上権者又ハ土地ノ賃借人カ其ノ土地ノ上ニ登記シタル建物ヲ有スルトキハ地上権又ハ土地ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキモ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得

条文の趣旨と解説

民法は、債権である賃借権についても、これを登記したときは、第三者に対する対抗することを認めていますが(民法605条)、登記をするためには地主の協力が必要であり、実際に登記がされることは稀です。そこで、借地借家法は、地上権又は土地賃借権の登記がなくても、借地権者が借地の上に登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができるものとされています(本条1項)。
建物保護ニ関スル法律が制定された経緯については、第1条の解説をご参照ください。

建物の滅失があった場合

借地権の対抗力が認められるためには、建物の存在が要件であるため(本条1項)、建物が滅失した場合には、原則として対抗力が失われます。しかし、暫定的に、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有することとされています(本条2項本文)。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限られます(本条2項ただし書)。

借地借家法附則

借地借家法の施行日である平成4年8月1日より前に借地上の建物の滅失があった場合は、本条2項の規定は適用されませんが(借地借家法附則8条)、借地借家法の施行日以後に借地上の建物の滅失があった場合は、借地借家法の施行日より前に設定された借地権であっても、本条2項の規定が適用されます。

条文の位置付け