土地のイメージ

本判決の位置づけ

権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する、と判断しました。

事案の概要

(1) 権利能力のない社団であるXが、その構成員全員に総有的に帰属する土地について、共有持分の登記名義人のうちの1人の権利義務を相続により承継したYに対し、委任の終了を原因として、Xの代表者であるAへの持分移転登記手続を求めて訴訟を提起しました。
(2) 原審は、Xの請求を認容し、「Yは、X代表者Aに対し、上記土地について、委任の終了を原因とする持分移転登記手続をせよ。」と命じました。
(3) Yは、権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産については、当該社団の代表者が自己の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟を提起すべきものであって、当該社団自身が代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟を提起することはできない、などと主張して上告しました。

判決文(抜粋)

訴訟における当事者適格は、特定の訴訟物について、誰が当事者として訴訟を追行し、また、誰に対して本案判決をするのが紛争の解決のために必要で有意義であるかという観点から決せられるべき事柄である。そして、実体的には権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産については、実質的には当該社団が有しているとみるのが事の実態に即していることに鑑みると、当該社団が当事者として当該不動産の登記に関する訴訟を追行し、本案判決を受けることを認めるのが、簡明であり、かつ、関係者の意識にも合致していると考えられる。また、権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産については、当該社団の代表者が自己の個人名義に所有権移転登記をすることを求める訴訟を提起することが認められているが、このような訴訟が許容されるからといって、当該社団自身が原告となって訴訟を追行することを認める実益がないとはいえない。
そうすると、権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有すると解するのが相当である。そして、その訴訟の判決の効力は、構成員全員に及ぶものと解されるから、当該判決の確定後、上記代表者が、当該判決により自己の個人名義への所有権移転登記の申請をすることができることは明らかである。なお、この申請に当たって上記代表者が執行文の付与を受ける必要はないというべきである。

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