民法第588条
金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
平成29年改正前民法第588条
消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。

条文の趣旨と解説

金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、これによって消費貸借が成立したものとみなされます。これを準消費貸借といいます。

旧債務と新債務の関係

準消費貸借の目的とされた旧債務が存在しない場合、準消費貸借は無効となります。
旧債務の存否に係る立証責任については、準消費貸借契約の効力を主張する者が旧債務の存在について立証責任を負うものではなく、旧債務の不存在を事由に準消費貸借契約の効力を争う者においてその事実の立証責任を負うものと解されています(最高裁昭和43年2月16日)。

平成29年民法(債権関係)改正

平成29年改正前民法588条は、「消費貸借によらないで」との文言が規定されていましたが、既存の消費貸借上の債務を旧債務として準消費貸借を締結することも判例で認められてきました(大審院大正2年1月24日判決)。そこで、同改正では、判例法理を明文化するという趣旨で、「消費貸借によらないで」との文言が削除されることとなりました。

条文の位置付け