民法第465条の9
前3条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については適用しない。

  1. 主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらの準ずる者
  2. 主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者
    イ 主たる債務者の総株主の議決権(株主総会のおいて決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者
    ロ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
    ハ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
    二 株式会社以外の法人が主たる債務者である場合におけるイ、ロ又はハに掲げる者に準ずる者
  3. 主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。
平成29年民法改正では、保証人保護の拡充の観点から、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約について、個人保証を制限する改正が行われました(465条の6等)。
しかし、他方で、多くの中小企業に対する融資においては、企業の信用補完や経営に対する規律付けの観点から、経営者に対する個人保証の必要性及び有用性は否定できないということが指摘されていました。また、主債務者の業務執行の決定に関与することができる者等であれば、経営状態に関する情報へのアクセスも可能であるから、保証契約を締結するリスクについて合理的な判断が困難とはいえないと考えられました。
そこで、本条では、経営者及びこれに準ずる一定の者について、個人保証の制限に係る規律(465条の6465条の7476条の8)の適用除外としています。

条文の位置付け