民法第423条の2
債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正において新設された規定です。

改正前民法下においても、判例は、被保全債権の額の範囲でのみ被代位権利を行使することができる旨を判示していました(最高裁昭和44年6月24日第三小法廷判決)。そこで、改正民法では、この判例法理が明文化されました。

なお、法制審議会民法(債権関係)部会における議論では、責任財産の保全という債権者代位権の本来の制度趣旨から、被代位権利の行使範囲を被保全債権の額の範囲に限定する必要はないとの議論がされていましたが(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)、代位行使の範囲を広げると、代位債権者が受領した金銭を預かり保管中に費消・隠匿したりするなど、債務者や他の債権者にとって不都合が大きい旨の指摘があり、上記判例の結論が維持されることとされました(部会資料73A)。

条文の位置付け