- 民法第348条
- 質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
条文の趣旨と解説
本条は「自己の責任で、質物について、転質をすることができる」と定める一方で、350条において準用する298条2項によれば、質権者は、債務者の承諾を得なければ、質物を担保に供することができないとされることから、両者の関係が問題となります。
通説は、設定者の承諾があれば質物に担保を設定することは当然に可能であり(350条において準用する298条2項。「承諾転質」といいます。)、設定者の承諾がない場合であっても、自己の責任で転質をすることができる(本条前段。「責任転質」といいます。)と解しています(直井義典『新注釈民法(6)物権(3)』)。
責任転質においては、債務者の承諾なくされるものであることから、原質権者は、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力であっても、その責任を負うものとされています(本条後段)。