借地借家法第36条
  1. 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
  2. 前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。

条文の趣旨と解説

相続の一般的効力として、相続人は、相続開始の時から、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。
そして、賃借権も、被相続人の財産に属した権利として、相続の対象となります。

相続人は配偶者(民法890条)及び血族相続人(民法887条、民法889条)と定められており、被相続人の内縁配偶者や事実上の養親子には相続権が認められていません。
判例は、被相続人と同居していた内縁配偶者や事実上の養親子を保護するため、相続人らが承継した賃借権を援用して賃貸人に対して居住する権利を対抗することができるという判例法理を確立してきました(事実上の養子につき最高裁昭和37年12月25日第三小法廷判決、内縁の妻につき最高裁昭和42年2月21日第三小法廷判決)。

しかし、相続人がない場合には、上記判例法理により相続人の賃借権を援用することができず、被相続人の内縁配偶者又は事実上の養親子は居住権を失うこととなります。
そこで、本条は、これらの者の保護を図るため、居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合に、被相続人と同居していた内縁配偶者又は事実上の養親子は建物の賃借人の権利義務を承継するものとしています(本条1項本文)。この場合、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、建物の賃借人の権利義務を承継した同居者に帰属することになります(本条2項)。

なお、同居者において、賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務の承継を望まないときは、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に建物の賃貸人に対して反対の意思を表示する必要があります(本条1項ただし書)。

条文の位置付け