会社の経営その他の事務処理を決定し、実行することを、「業務の執行」といいます。
以下では、取締役会を設置していない会社(「非取締役会設置会社」)における業務の執行について、ご説明します。
取締役による業務の執行
取締役が1名の場合
取締役が1名の場合は、当該取締役が単独で業務を執行することになります。
取締役が2名以上いる場合
(1) 決定の方法
取締役の過半数をもって決定することになります。
定款で別段の定めをすることもできます。
(2) 個々の取締役への委任
もっとも、業務執行に関するすべての事項について、取締役の過半数をもって決定していたのでは、煩雑となってしまいますので、各取締役に決定を委任することも認められています。
(3) 各取締役に委任することができない事項
ただし、以下の事項の決定については、各取締役に決定を委任することは認められません。
a. 支配人の選任及び解任
b. 支店の設置、移転及び廃止
c. 株主総会を招集する場合の決定事項
d. 内部統制システムの構築に関する事項
e. 取締役の責任の免除に関する定款の定めに基づく責任の免除の決定
定款や株主総会による制約
(1) 定款による制約
定款で別段の定めがある場合には、取締役の業務執行の権限が制約されることになります。
(2) 株主総会による制約
非取締役会設置会社においては、株主総会は、会社に関する一切の事項を決議することができますので、株主総会が会社の業務執行について決議することも可能です。
また、法令又は定款によって株主総会の決議事項とされたものについては、取締役が決定することはできません。法令によって株主総会の決議事項とされたものの例としては、譲渡制限株式の譲渡等の承認や取締役の利益相反取引の承認などがあります。
関連条文
- 会社法第348条
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- 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。)の業務を執行する。
- 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
- 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
- 大会社においては、取締役は、前項第四号に掲げる事項を決定しなければならない。
一 支配人の選任及び解任
二 支店の設置、移転及び廃止
三 第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)に掲げる事項
四 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適性を確保するために必要となるものとして法務省令で定める体制の整備
五 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
- 会社法第295条
- 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。