連帯債務の相続について、「連帯債務者の一人が死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解する」と判示しました。

判決文(抜粋)

最高裁昭和34年6月19日第二小法廷判決
 連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付につき各独立に全部の給付をなすべき債務を負担しているのであり、各債務は債権の確保及び満足という共同の目的を達する手段として相互に関連結合しているが、なお、可分なること通常の金銭債務と同様である。ところで、債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきであるから(大審院昭和五年(ク)第一二三六号、同年一二月四日決定、民集九巻一一一八頁、最高裁昭和二七年(オ)第一一一九号、同二九年四月八日第一小法廷判決、民集八巻八一九頁参照)、連帯債務者の一人が死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解するのが相当である。

前提知識と簡単な解説

相続の効力

相続は、被相続人の死亡によって開始し(民法882条)、相続人は、相続開始の時から、被相続人の一身に専属したものを除き(民法896条ただし書)、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。
相続人が数人あるときは、相続財産は、共同相続人の共有に属し(民法898条1項)、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します(民法899条)。

多数当事者の債権及び債務

多数当事者の債権及び債務については、民法では、原則として、各債権者又は各債務者が、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負うものとされています(民法427条)。
しかし、連帯債務の場合は、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができるとされています(民法432条)。

本判決が引用している判例

本判決で引用する大審院昭和5年12月4日決定は、遺産相続人が数人ある場合の債務の承継について、「被相続人ノ金銭債務其ノ他可分債務ニ付テハ各自分担シ平等ノ割合ニ於テ債務ヲ負担スルモノニシテ連帯責任ヲ負ヒ又ハ不可分債務ヲ負フモノニ非サルコトハ民法第千三条第四百二十七条ノ規定ニ依リ明ナリ」と判示していました。
また、同じく本判決で引用する最高裁昭和29年4月8日第一小法廷判決は、相続人が数人ある場合の可分債権の承継について、「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」と判示していました。