本判決の位置づけ

破産手続開始前に締結された共済契約に基づく共済金請求権が、破産法34条2項の「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するとして、破産財団に属する財産であると判示したものです。

事案の概要

Aが、破産手続開始前に、Yとの間で、疾病入院特約付きの生命共済契約を締結しました。
なお、当該共済契約には、被共済者が疾病入院特約の効力が生じた日以後に発病した同一の疾病を直接の原因として、その疾病の治療のため、病院、診療所に継続して5日以上入院した場合、Yは被共済者に対して、疾病入院共済金を支払う旨が規定されていました。
Aが破産手続開始決定を受け、Xが破産管財人に選任されました。
その後、Aは疾病の治療のため入院し、共済金支払事由に該当するところとなりました。
そこで、破産管財人であるXは、Yに対し、当該共済事故に基づき発生した共済金請求権は破産財団に属する財産であると主張し、Yに対し、共済金及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めました。

判決文(抜粋)

保険金請求権は、保険契約締結とともに、保険事故の発生を停止条件とする債権として発生しており、保険事故発生前における保険金請求権(以下、「抽象的保険金請求権」という。)も、差押えや処分が可能であると解される。このように、抽象的保険金請求権が、差押えや処分が可能な財産であるとされている以上、破産者の財産に対する包括的差押えの性質を有する破産手続開始決定についても別異に解する理由はなく、保険契約が締結された時点で、破産手続開始決定により破産財団に属させることが可能な財産として発生しているものとみるのが合理的である。したがって、破産手続開始前に締結された保険契約に基づく抽象的保険金請求権は、破産法三四条二項の「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」として、破産手続開始決定により、破産財団に属する財産になるものと解するのが相当である。そして、本件共済契約も保険契約の一種であると解されるから、上述したところが本件共済契約にも当てはまるものと解すべきである。