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本判決の位置づけ

新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、当該確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、当該確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有する、と判断しました。

事案の概要

(1) Xが新株予約権を行使したことにより、Y1は、平成23年2月、普通株式を発行し(以下「本件株式発行」といいます。)、Xは、当該株式の株主となりました。
(2) 本件株式発行がされた当時、Xは、Y1の代表取締役でしたが、平成23年3月15日、代表取締役を解任されました。その後、Y1は、Xの保有するY1の株式について質権の設定を受けたとするAに対して、内容証明郵便により、本件株式発行は見せ金によって払い込みの外形を作出してされた無効なものであることを通知しました。これに対し、XとAは、Y1に対し、内容証明郵便により、本件株式発行は有効なものであることを通知しました。
(3) Y1の株主であるY2は、平成23年7月、Y1を被告として、地方裁判所に本件株式発行が存在しないことの確認を求める訴えを提起し、予備的に本件株式発行を無効とすることを求める訴えを追加しました(以下「前訴」といいます。)。Y2は、前訴において、本件株式発行は見せ金によって払込みの外形が作出されたものにすぎないことなどを主張しました。
(4) Y1は、前訴の第1回口頭弁論期日において、請求を認めるとともに、請求原因事実を全て認める旨の答弁をしました。第2回口頭弁論期日において、Y1から提出された、本件株式発行が見せ金によるものであることなどが記載された陳述書を更に取り調べた上、口頭弁論を終結して、平成23年9月27日、本件株式発行を無効とする判決〈以下「前訴判決」といいます。)を言い渡しました。そして、前訴判決は、同年10月14日の経過により、確定しました。
(5) Xは、平成23年10月19日、前訴が提起されて前訴判決がされたことを知り、同年11月11日、前訴について、独立当事者参加の申出をするとともに(以下「本件独立当事者参加」といいます。)、本件再審の訴えを提起しました。
(6) 原審は、Xは、前訴判決の効力を受ける者であって共同訴訟的補助参加をすることができるものであるから、本件再審の訴えの原告適格を有するということができるが、Yらが前訴係属の事実をXに知らせず前訴判決を確定させ、これによってXの権利が害されたとしても、前訴判決に民訴法338条1項3号の再審自由があるということはできないとして、本件再審の訴えに係る請求を棄却すべきものとしました。

判決文(抜粋)

新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、再審原告として上記確定判決に対する再審の訴えを提起したとしても、上記確定判決に係る訴訟の当事者ではない以上、上記訴訟の本案についての訴訟行為をすることはできず、上記確定判決の判断を左右できる地位にはない。そのため、上記第三者は、上記確定判決に対する再審の訴えを提起してもその目的を達することができず、当然には上記再審の訴えの原告適格を有するということはできない。
しかし、上記第三者が上記再審の訴えを提起するとともに独立当事者参加の申出をした場合には、上記第三者は、再審開始の決定が確定した後、当該独立当事者参加に係る訴訟行為をすることによって、合一確定の要請を介し、上記確定判決の判断を左右することができるようになる。なお、上記の場合には、再審開始の決定がされれば確定判決に係る訴訟の審理がされることになるから、独立当事者参加の申出をするために必要とされる訴訟係属があるということができる。
そうであれば、新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有するということになるというべきである。

新株発行の無効の訴えは、株式の発行をした株式会社のみが被告適格を有するとされているのであるから(会社法834条2号)、上記株式会社によって上記訴えに係る訴訟が追行されている以上、上記訴訟の確定判決の効力を受ける第三者が、上記訴訟の係属を知らず、上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかったとしても、直ちに上記確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由があるということはできない。
しかし、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならないのであり、(民訴法2条)、とりわけ、新株発行の無効の訴えの被告適格が与えられた株式会社は、事実上、上記確定判決の効力を受ける第三者に代わって手続に関与するという立場にもあることから、上記株式会社には、上記第三者の利益に配慮し、より一層、信義に従った訴訟活動をすることが求められるところである。そうすると、上記株式会社による訴訟活動がおよそいかなるものであったとしても、上記第三者が後に上記確定判決の効力を一切争うことができないと介することは、手続保障の観点から是認することはできないのであって、上記株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には、上記確定判決には、民訴法338条1項3号の再審事由があるというべきである。

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関連条文

民事訴訟法第338条
次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。
三 法廷代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと
会社法第834条
次の各号に掲げる訴えについては、当該各号に定める者を被告とする。
二 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え 株式の発行をした株式会社