民法第634条
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。

  • 注文者の責に帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
  • 請負が仕事の完成前に解除されたとき。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正により、新設された規定です。平成29年改正前は、仕事が完成しなかった場合において、請負人が注文者に対して、報酬を請求することができるかどうかについては、明文の規定を置いていませんでした。

仕事の完成が不能となった場合

仕事の完成が不能となった場合でも、仕事の一部が既に履行され、履行された部分が注文者の利益となっている場合には、この既履行部分について請負人の報酬請求を認めることが合理的であると考えられます。そこで、改正法は、既履行部分のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を完成をみなした上で、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができると規定しました(本条1号)。

なお、注文者の責めに帰すべき事由によって仕事を完成することができなくなった場合については、危険負担の規定(536条2項)に従って、報酬を請求していくこととなります。すなわち、請負人は、請負報酬の全額を請求することができますが(536条2項前段)、請負人が自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを注文者に償還しなければなりません(536条2項後段)。

請負が仕事の完成前に解除された場合

また、平成29年改正前においても、仕事の完成前に請負契約が解除された場合について、判例は「工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に右契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のない限り、既施工部分については契約を解除することができず、ただ未施工部分について契約の一部解除をすることができる」(最高裁昭和56年2月17日判決)として、既履行部分に相当する割合的報酬を肯定してきました。改正法では、かかる判例の考え方を踏まえ、解除された場合の報酬請求権を明文化しました(本条2号)。

条文の位置付け