- 民法第590条
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- 第551条の規定は、前条第1項の特約のない消費貸借について準用する。
- 前条第1項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。
- 平成29年改正前民法第590条
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- 利息付きの消費貸借において、物に隠れた瑕疵があったときは、貸主は、瑕疵がない物をもってこれに代えなければならない。この場合において、損害賠償の請求を妨げない。
- 無利息の消費貸借においては、借主は、瑕疵がある物の価額を返還することができる。この場合において、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項の規定を準用する。
条文の趣旨と解説
目的物に契約不適合がある場合における規律
無利息消費貸借には、贈与者の引渡義務の規定(551条)が準用されます(本条1項)。したがって、貸主は、消費貸借の目的物を、貸借の目的として特定した時の状態で引渡すことを約したものと推定されます。
一方で、利息付消費貸借契約の場合には、有償契約であるため559条が適用され、売主の担保責任に関する規定が準用されます。したがって、消費貸借によって引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、貸主に対して、代替物の引渡し等を請求することができます。
借主の返還義務
平成29年民法改正前590条2項は、無利息消費貸借においては瑕疵ある物の価額を返還することができると定めており、利息付消費貸借の場合には価額の返還が認められていませんでした。しかし、利息の有無にかかわらず、同程度に瑕疵ある物を調達して返還するのは通常困難ですから、利息の有無によって異なる取扱いをする理由はありません。また、改正前も、同条は利息付消費貸借にも適用されるものとの解釈がされていました。そこで、改正では、利息の特約の有無にかかわらず、物の価額の返還を認めるべきであると改められました(本条2項)。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 消費貸借
- 民法第587条 – 消費貸借
- 民法第587条の2 – 書面でする消費貸借等
- 民法第588条 – 準消費貸借
- 民法第589条 – 利息
- 民法第590条 – 貸主の引渡義務等
- 民法第591条 – 返還の時期
- 民法第592条 – 価額の償還
- 消費貸借
- 契約
- 債権