民法第494条
  1. 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は消滅する。
    一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
    二 債権者が弁済を受領することができないとき。
  2. 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
平成29年改正前民法第494条
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

条文の趣旨と解説

供託は、弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託所に寄託して、その債務を免れる制度です。

平成29年民法(債権関係)改正

受領拒絶に先立つ弁済の提供が必要であるという判例法理(大審院大正10年4月30日判決)が明文化されました。
ただし、口頭の提供をしても債権者が受領しないことが明瞭な場合に、例外として、弁済の提供をすることなく供託することができるとする判例(大審院大正11年10月25日判決)及び供託実務は、引き続き維持されるものと考えられています(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。

また、「債権者を確知することができないとき」との要件につき、改正前民法では債務者が自己の無過失の主張・立証責任を負うとされていた点が改められ、改正民法では、債権者が債務者に過失があることの主張・立証責任を負担することとされました。

条文の位置付け