民法第502条
  1. 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。
  2. 前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。
  3. 前2項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。
  4. 第1項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
平成29年改正前民法第502条
  1. 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。
  2. 前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。

条文の趣旨と解説

一部弁済による代位

債権の一部につき代位弁済がされたときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済した価額に応じて債権者とともにその権利を行います。

平成29年改正前民法は、行使要件を明確に定めていなかったことから、改正前民法下における判例は、代位者が単独で抵当権を実行することができるとしていました(大審院昭和6年4月7日決定)。しかし、この判例の結論に対しては、債権者を不当に害することになるとの批判がありました。

そこで、改正民法は、上記判例を改め、債権者の同意がなければ、代位によって取得した権利を行使することができないものとしています(本条1項)。
一部弁済による代位が認められる場合であっても、債権者は単独で権利行使することができます(本条2項)。また、担保の目的となっている財産の売却代金等について、債権者が優先することが明記されています(本条3項)。

代位弁済と解除権

契約の解除権のように契約当事者の地位に付随する権利は代位の目的となるべきものではなく、債務の不履行による解除は債権者だけが行うことができます。
債権者が契約を解除したときは、代位者にその弁済した価額及びその利息を償還しなければなりません(本条4項後段)。

条文の位置付け