民法第902条の2
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じて債務の承継を承認したときはこの限りでない。

条文の趣旨と解説

平成30年民法(相続関係)改正により新設された規定です。
遺言によって相続分の指定等がされた場合における相続債務の承継について定めています。

改正前民法においては、遺言によって相続分の指定等がされた場合における相続債務の承継について、明確な規定がありませんでした。
この点につき判例は、「遺言による相続債務についての相続分の指定は、相続債務の債権者(以下「相続債権者」という。)の関与なくされたものであるから、相続債権者に対してはその効力が及ばない」と判示していました(最高裁平成21年3月24日第三小法廷判決)。

改正民法においては、相続債務の性質上、債務者である被相続人にその処分権限を認めるのは合理性に欠けると考えられたことから(『民法(相続関係)等の改正に関する中間試案の補足説明』)、上記判例の考え方を採り入れ、相続債務については、債権者との関係では、原則として法定相続分に応じて承継されることとされています(本条本文)。
他方で、債務の引当財産を確保する観点から、相続債権者にとっても指定相続分等に応じた債務の承継の方が望ましいという場合もあり得ることから、例外的に債権者の承認があれば、相続分の指定等の割合に応じて承継されることとされています(本条ただし書)。

条文の位置付け