- 民法第904条
- 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。
条文の趣旨と解説
被相続人から共同相続人に対する生前の贈与が、特別受益として持戻し(903条)の対象となる場合、持戻される贈与の価額を算定するに際し、いつの時点の評価額とすべきかが問題となります。
この問題に対しては、(1) 贈与時の価格に従って算定する考え方、(2) 相続開始時の価格に従って算定する考え方、(3) 遺産分割を実際に行う時を価額の算定時とする考え方があり、通説は、(2) 相続開始時説とされています(本山敦『新注釈民法(13)』)。
したがって、通説的見解によれば、贈与時の財産について価格の変動があった場合には、相続開始時の時価に従って評価されるべきこととなります。
ただし、以上の議論は、贈与財産の価格が「自然的に」増減した場合の算定方法であり、「人為的に」増減した場合については、本条が別の算定方法を規定しています(中川善之助『相続法』)。
すなわち、受贈者の行為によって、その贈与財産が滅失し、またはその価格の増減があった場合には、贈与財産は、贈与時の状態のまま存在するものとみなし、価額を算定することとなります(本条)。