民法第330条
  1. 同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
    1. 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
    2. 動産の保存の先取特権
    3. 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権
  2. 前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。
  3. 果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。

条文の趣旨と解説

同一の動産について特別の先取特権が相互に競合する場合には、その優先権の順位は、(1) 不動産の賃貸、旅館の宿泊、運輸の先取特権、(2) 動産の保存の先取特権(数人の保存者がいるときは、後の保存者が前の保存者に優先します。)、(3) 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権の順序に従います(本条1項)。

上記の例外として、第一順位の先取特権者が、その債権取得の時に、第二順位又は第三順位の先取特権があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができないものとされています(本条2項前段)。また、第一順位の先取特権者は、第一順位の先取特権者のために者を保存した者に対しては、優先権を行使することができません(本条2項後段)。

果実について先取特権が相互に競合する場合には、その優先権の順には、(1) 農業の労務に従事する者、(2) 種苗又は肥料の供給者、(3) 土地の賃貸人の順序になります(本条3項)。

条文の位置付け