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少額訴訟とは

簡易裁判所において、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、原則として一期日で審理を終え、判決を言い渡される訴訟のことです。通常の訴訟と比べて、簡易で迅速な手続が設けられています。

少額訴訟に向いている事案

事案の内容や相手方の争い方等により一概にはいえませんが、少額訴訟の特徴として一期日審理の原則や証拠調べの制限などが設けられていることから、権利関係が簡明であり、争点の少ない事件に向いているといえます。

少額訴訟の流れと主な特徴

少額訴訟の流れについて、通常の訴訟と異なる点をご説明します。
通常の訴訟の流れについては、こちらのページをご覧ください。
裁判手続の流れ

(1) 訴えの提起

少額訴訟を利用する場合には、訴えを提起する際に、少額訴訟による審理および裁判を求める旨を申述することとなります(民事訴訟法368条2項)。また、少額訴訟の利用回数には制限があることから、訴え提起の際に、少額訴訟による審理および裁判を求めた回数を届け出る必要があります(368条3項)。

(2) 被告の対応

少額訴訟の呼び出しを受けた被告は、通常の訴訟に移行させる旨の申述をすることによって、少額訴訟を通常の訴訟に移行させることができます。ただし、第一回口頭弁論期日において被告が弁論をした後、または第一回口頭弁論期日が終了した後には、通常訴訟に移行させる旨の申述をすることはできません(373条1項)。なお、この被告の申述は、期日に行う場合を除き、書面で行う必要があります(規則228条1項)。
少額訴訟においては、被告は、反訴を提起することができません(369条)。

(3) 裁判所の決定により通常の訴訟へ移行する場合

(a) 少額訴訟の要件を満たさない場合、(b) 少額訴訟を利用した回数の届出をしない場合、(c) 公示送達によらなければ期日の呼び出しができない場合、(d) 少額訴訟により審理および裁判をするのが相当でないと認める場合には、裁判所は、通常の手続により審理および裁判をする旨の決定をしなければなりません。この決定に対しては、当事者は不服を申し立てることができません。

(4) 期日における審理

特別の事情がある場合を除き、第一回口頭弁論期日で、審理が終わります(370条)。当事者は、第1回口頭弁論期日までに、すべての攻撃または防御の方法を提出しなければなりません。証拠調べの対象は、即時に取り調べることができる証拠に限ります(371条)。

(5) 判決

原則として、口頭弁論の終結後に、直ちに判決が言い渡されます(374条1項)。
裁判所は、請求を認容する判決をする場合、被告の資力等を考慮して必要があると認めるときは、分割払いや支払の猶予を定めることができます(375条1項)。また、請求を認容する判決については、職権で、仮執行の宣言が付されます(376条1項)。

(6) 控訴の禁止、異議

少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができません(377条)。終局判決に対する不服申立ての方法としては、異議の申立てがあります(378条1項)。異議は、判決書または調書判決の送達を受けた日から2週間の不変期間内に行う必要があります(378条1項)。
当事者から適法な異議が申し立てられたときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復し、通常の訴訟手続により、審理および裁判をされることとなります(379条)。