本判決の内容(抜粋)
- 最高裁昭和29年12月24日第三小法廷判決
- 家庭裁判所が相続放棄の申述を受理するには、その要件を審査した上で受理すべきものであることはいうまでもないが、相続の放棄に法律上無効原因の存する場合には後日訴訟においてこれを主張することを妨げない。
前提知識と簡単な解説
相続の承認及び放棄について
相続は、被相続人の死亡によって開始し(民法882条)、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものとされています(民法896条本文)。
一方で、相続人は相続の承認又は放棄の選択をすることが認められており、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に(「熟慮期間」といいます。)、相続について承認又は放棄をすることができます(民法915条1項本文)。
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(民法938条)。相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条。なお、当時の昭和37年改正前民法939条1項は「放棄は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と表現していました。)。
本判決の位置付け
当時の家事審判法及び家事審判規則によれば、相続放棄の申述を却下する審判に対し即時抗告をすることが認められていましたが(家事審判法14条、家事審判規則115条2項において準用する111条)、受理の審判に対しては、即時抗告を認める旨の規定がなく、即時抗告をすることができないと解されていました。本判決によれば、相続放棄の効力を争う者は、後日訴訟において主張することができることになります。
なお、平成23年に成立した家事事件手続法においても、相続放棄の申述を受理する審判に対して即時抗告をすることを認める規定はないことから(家事事件手続法85条1項、201条9項3号参照)、本判決の趣旨は、家事事件手続法下においても妥当するものと考えられます。