令和元年5月17日、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律が成立しました。

この法律は、権利関係の明確化と適正な利用を促進するという観点から、

  • 表題部所有者不明土地について所有者の探索
  • 探索の結果に基づく表題部所有者の登記
  • 所有者等を特定することができなかった土地の管理

に関する制度を創設するものです。

土地のイメージ

表題部所有者不明土地とは

所有権の登記がない不動産については、表題部に、所有者の氏名又は名称及び住所が登記されます。この表題部に所有者として記録されている者を「表題部所有者」といいます。所有権保存登記がされると、表題部所有者に関する登記事項は抹消されます。

この法律が対象とする「表題部所有者不明土地」とは、表題部所有者欄の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていない土地を指します。

表題部所有者不明土地が発生している理由は、土地台帳と不動産登記簿の一元化作業の際、未登記の土地について所有者の氏名のみで住所の記載が洩れている場合は,そのまま所有者の氏名だけが移記されたこと等に起因していると言われています。

不動産登記の基礎知識については、次の記事をご参照ください。
不動産登記の調べ方

表題部所有者不明土地についての探索

登記官による調査

登記官は、表題部所有者不明土地について、土地の利用の現況その他の事情を考慮して、表題部所有者不明土地の登記の適正化を図る必要があると認めるときは、職権で、所有者の探索を行います(3条1項)。登記官が、探索を行おうとするときは、あらかじめ、その旨を公告しなければなりません(3条2項)。

登記官の調査権限

登記官は、所有者等の探索のため、

  • 表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査を行うこと
  • 表題部所有者不明土地の関係者から知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めること、
  • その他必要な調査をすること

などが認められます(5条)。
また、地方公共団体の長その他の者に対し、表題部所有者不明土地の所有者等に関する情報の提供を求めることができます(8条)。

所有者等探索委員による調査

登記官の調査を補充し、所有者等の探索に必要な調査を行い、登記官に意見を提出する所有者等探索委員の制度が創設されました(9条1項)。所有者等探索委員は、必要な知識及び経験を有する者から、法務峡または地方法務局の長が任命します(9条2項)

探索の結果に基づく表題部所有者の登記

所有者等の特定

登記官は、探索により得られた情報の内容その他の事情を総合的に考慮して、表題部所有者として登記すべき者等について判断をします(14条1項)。

表題部所有者の登記

登記官は、所有者等の特定をしたときは、表題部所有者不明土地について、職権で、遅滞なく、表題部所有者の登記を抹消した上、(ア)表題部所有者として登記すべき者がいるときは、その者の氏名又は名称及び住所を、(イ)表題部所有者として登記すべき者がいないときは、その旨と理由を登記します(15条)。

所有者等特定不能土地の管理

所有者等を特定することができなかった旨の登記がある土地(「所有者等特定不能土地」といいます。)について、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立人より、特定不能土地等管理者による管理を命ずる処分(「特定不能土地等管理命令」といいます。)を行います(19条1項)。
特定不能土地管理者が選任された場合は、対象土地の管理及び処分をする権限は、特定不能土地管理者に専属します。ただし、(1)保存行為及び(2)対象土地の性質を変えない範囲内において、利用または改良をする行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可が必要です(21条)。

施行日について

この法律は、公布の日から6月以内の政令で定める日に施行されますが、所有者等特定不能土地の管理に関する制度については、公布の日から1年6月以内の政令で定める日から施行されることが予定されています。