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本判決の位置づけ

破産管財人による破産者の不当利得返還請求権の行使は、不当利得が不法原因給付であるとする不当利得者からの抗弁によって妨げられないと判示したものです。

事案の概要

株式会社Aは、ウェブサイトの企画、政策、開発、運営等を目的として設立された株式会社ですが、無限連鎖講の防止に関する法律及び出資法に違反する事業を行っている疑いが生じ、さらにAの代表者が失踪しました。
Aは自己破産の申立がされ、Xが破産管財人に選任されました。
Xは、Aの会員となって金員を受領したYに対して、配当金または紹介料の名目で受領した金員とYが出資金等として出捐した金員の差額について、不当利得として返還を求めました。
原審は、Yの利得は不法原因給付に基づくものであり、破産管財人が返還請求を行使する場合であっても、返還請求することは許されないものというべきであると判断しました。

判決文(抜粋)

破産管財人は,破産法に基づき,裁判所の監督の下に,総債権者に公平な満足を得させることを目的として,固有の権限をもって管財業務を遂行する独立の主体であり,破産管財人による権利行使は,破産者の権利承継人又は代理人としての立場で破産者の権利を行使するものではなく,また,破産者に代位して破産者の権利を行使するものでもないから,破産管財人による破産者の不当利得返還請求権の行使は,当該不当利得が不法原因給付であるとする不当利得者からの抗弁によって妨げられるものではないものというべきである。したがって,破産会社の破産管財人である控訴人は,不当利得者である被控訴人に対し,上記不当利得返還請求権を行使することができる。