借地借家法が施行される前に締結された土地賃貸借契約に関しては、借地借家法と旧借家法のどちらが適用されるのでしょうか。
平成4年(1992年)8月1日、借地借家法が施行されるとともに、旧借地法が廃止されました。原則として、その施行前に生じた事項についても借地借家法の規定が適用されますが、契約の更新及び建物の朽廃に関する規定など、借地借家法附則に特に定めがある場合には、借地借家法が適用されず旧借地法が適用されることとなります。

借地借家法の施行日前に設定された借地権について

借地借家法が平成3年10月3日に成立し、平成4年8月1日より施行されました。借地借家法が施行されるとともに、旧借地法は廃止されます(借地借家法附則2条2号)。

旧借地法と借地借家法の適用関係については、借地借家法附則4条本文が次のように定めています。

借地借家法附則第4条本文
この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。

したがって、借地借家法の施行される平成4年8月1日前に生じた事項についても、借地借家法が遡及適用されることを原則としつつ、例外的に借地借家法附則に定めがある場合には、旧法に従うこととされています。

旧借地法が適用される場面

契約の更新

平成4年8月1日前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、借地借家法は適用されず、旧借地法に従います(借地借家法附則6条)。

借地借家法では更新後の借地権の存続期間につき、最初の更新では20年、2回目以降の更新は10年とし(借地借家法4条本文)、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とします(同条ただし書)。

これに対して、旧借地法では、堅固建物の所有を目的とする場合は30年、非堅固建物の所有を目的とする場合は20年とし(借地法5条1項)、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その定めに従います(借地法5条2項)。

建物の朽廃

旧借地法では、期間満了前に建物が朽廃したときは、借地権は消滅するものとされていました(借地法2条1項ただし書。更新後の朽廃につき、5条1項後段、6条1項後段。)。

借地借家法では、建物の朽廃による借地権の消滅の規定を廃止したため、建物が朽廃したとしても、借地権が消滅することはありません。

この建物の朽廃に関する規律に関しては、平成4年8月1日前に設定された借地権については、旧借地法が適用されるものとされています(借地法附則5条)。

再築による期間の延長

旧借地法では、借地権消滅前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造した場合において、土地所有者が遅滞なく異議を述べなかったときは、建物滅失の日から起算して、堅固建物について30年、非堅固建物について20年間存続するものとされていました(借地法7条本文)。

これに対して借地借家法は、更新の前後で規律を異にしています。
最初の期間満了前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造した場合、借地権設定者の承諾があるとき又は借地権設定者が一定の期間内に異議を述べなかったときは、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続するものとされています(借地借家法7条1項本文、2項本文)。
契約の更新後に建物の滅失があった場合は、借地権者は地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができるものとされています(借地借家法8条1項)。また、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができるものとされています(借地借家法8条2項)。

借地借家法の施行前に設定された借地権について、その借地上建物の滅失後における建物の築造による期間の延長に関しては、旧借地法の規律によるものとされています(借地借家法附則7条)。

建物買取請求における支払の期限許与

借地借家法では、借地権者により建物買取請求権が行使された場合において、建物が借地権の存続期間満了前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができるものとされています(借地借家法13条2項)。

当該規定は、借地借家法によって新設された規定であるところ、借地借家法附則により、借地借家法の施行前に設定された借地権については適用されません(借地借家法附則9条1項)。