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本判決の位置づけ

  • 共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める手続は、民法258条に基づく共有物分割訴訟である、
  • 遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合、賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は、遺産分割がされるまでの間保管する義務を負う、
  • 各共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で、遺産共有持分を取得する者に対し、各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた賠償金を支払うことを命じることができる、

と判示しました。

事案の概要

(1) 本件土地は、平成18年当時、X1、ZおよびAが共有していました。
(2) Aは平成19年に亡くなりました。Aの相続人は、Aの夫であるX1、長男であるX2、長女であるY1、次男であるY2の4名であり、Aが有していた本件土地の共有持分(以下「本件持分」といいます。)は、4名による遺産共有の状態となりました。
(3) X1、X2およびZは、Y1およびY2との間で、土地の分割に関する協議が調わないため、共有分割訴訟を提起しました。
(4) X1、X2およびZは、本件持分をXが取得し、ZがAの共同相続人らに対して本件持分の価格の賠償をする方法による分割を希望していました。
(5) 原審は、X1、X2およびZが希望するとおりの全面的価格賠償の方法を採用するのが相当であると判断しました。

判決文(抜粋)

(1) 共有物について、遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい、これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合、共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり、共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり、この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である。
(2) 遺産共有持分と他の共有持分とが併存する共有物について、遺産共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には、遺産共有持分権者に支払われる賠償金は、遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから、賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は、これをその時点で確定的に取得するものではなく、遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うというべきである。
(3) 裁判所は、遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には、その判決において、各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で、遺産共有持分を取得する者に対し、各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である。

判決文の全文は、こちら。
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