民法第428条
次款(連帯債権)の規定(第433条及び第435条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。
平成29年改正前民法第428条
債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

条文の趣旨と解説

本条は、不可分給付を目的とする債権関係につき、多数の債権者がある場合の規律を定めています。

平成29年民法(債権関係)改正

改正前民法は、不可分債権の法的性質について、債権の目的が「性質上」不可分である場合と、性質上可分であるが「意思表示によって」不可分とされる場合があるものと整理していました(改正前民法428条)。
改正民法は、不可分債権の法的性質を、債権の目的が性質上不可分である場合のみに変更し(本条)、一方で、債権の目的が性質上可分であり、法令の規定又は当事者の意思表示によって連帯して有する債権については、「連帯債権」として明文化しました(432条)。

不可分債権の例としては、所有権(共有権)に基づく共有物引渡請求権(大審院大正10年3月18日判決)や、貸主が数名いる場合の使用貸借契約の終了を原因とする家屋明渡請求権(最高裁昭和42年8月25日第二小法廷判決)が挙げられます。

不可分債権の規律

不可分債権の規律は、連帯債権の規定を原則として準用するとした上で、例外的に、連帯債権における絶対的効力事由である「更改又は免除」(433条)及び「混同」(435条)の規定は準用から除外されています。

不可分債権の効力として、不可分債権の各債権者は、全ての債権者のために履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができます(本条において準用する432条)。

条文の位置付け