民法第429条
不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
平成29年改正前民法第429条
  1. 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならない。
  2. 前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対してその効力を生じない。

条文の趣旨と解説

不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、原則として他の不可分債権者に対して効力を生じません(428条において準用する435条の2)。不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除がされた場合でも、他の債権者は債務の全部の履行を請求することができます(本条本文)。

もっとも、他の債権者が債務の全部の履行を請求する場合、本来であれば、全部の弁済を受けた債権者は、更改又は免除をした債権者に利益を分与する必要があり、さらに、更改又は免除をした債権者は、分与を受けた利益を不当利得として、債務者に返還すべきこととなるはずです。この償還の循環を回避するために、民法は、全部の弁済を受けた債権者は、更改又は免除をした債権者に分与すべき利益を、直接に債務者に償還すべきものとしました(本条ただし書)。

条文の位置付け