民法第423条の5
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。

改正前民法下において、判例は、債権者が債権者代位権を行使して訴訟提起した場合に、債務者に対してその事実を通知するか、または債務者がこれを了知するときは、債務者は、自らその権利を行使することはできず、したがって、自ら訴えを提起することができないとしていました(大審院昭和14年5月16日判決、最高裁昭和48年4月24日第三小法廷判決)。

しかし、債権者代位権は、債務者が自ら権利行使をしない場合に限ってその行使が認められるものであること等から、債務者の処分権限を奪うのは過剰である、債務者が自らの権利の取立てその他の処分の権限を失うとすると、債務者の地位が著しく不安定なものとなるとの批判がありました。

そこで、改正法では、従来の判例法理と異なる規律が設けられました。

債権者代位訴訟が提起された場合について

債権者代位訴訟の係属中、本条により債務者の処分権限は制限されないとしても、債務者が被代位権利を訴訟物とする別訴を提起することは、重複訴訟の禁止(民事訴訟法142条)に抵触するため許されません。そこで、債務者としては債権者代位訴訟に参加するという方法を採ることとなります(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。

条文の位置付け