民法第497条
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
一 その物が供託に適しないとき。
二 その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
三 その物の保存について過分の費用を要するとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。
平成29年改正前民法第497条
弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも、同様とする。

条文の趣旨と解説

本条は、弁済の目的物を競売しその代価を供託する、自助売却の要件を定めています。

平成29年民法(債権関係)改正

平成29年民法前民法は、自助売却が認められる場面として「弁済の目的物が供託に適しないとき」、「その物について滅失若しくは毀損のおそれがあるとき」、「その物の保存について過分の費用を要するとき」と定めていました。

改正民法では、「滅失若しくは毀損のおそれがあるとき」との要件につき、市場での価格の変動が激しく、放置しておけば価値が暴落し得るようなものについても、自助売却を認める必要があると考えられたことから、「滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき」と改められました(本条2号)。

また、債務の履行地に当該物品を保管することができる供託法所定の供託所が存在しない場合にも、供託所の指定又は供託物保管者の選任(495条2項)を得る見込みの有無にかかわらず、迅速な自助売却が認められるよう、改正民法では、あらたに「その物を供託することが困難な事情があるとき」との要件が加えられました(本条4号)。

条文の位置付け