民法第93条
  1. 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
  2. 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
平成29年改正前民法第93条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

条文の趣旨と解説

表意者がその真意でないことを知ってした意思表示も、原則として有効とされます(本条1項本文)。取引の安全のために意思表示に対する信頼を保護する必要がある一方で、真意でないことを知りながら意思を表示した表意者を保護する必要性は高くないと考えられるからです。
ただし、意思表示の相手方が、その意思表示が表意者の真意ではないことを知り、または知ることができたときは、相手方を保護する必要はないことから、その意思表示は無効となります(本条2項ただし書)。

平成29年民法(債権関係)改正について

改正前民法93条ただし書は、表意者の「真意を知り、又は知ることができたとき」と規定していましたが、通説は、真意の内容まで知らなくても、真意ではないことを知り、または知ることができたときは、相手方を保護する必要がないと解釈されてきました。そこで、改正民法では、このような理解に従って、文言が修正されています(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。
また、改正前民法下においても、心裡留保の意思表示を前提として新たに法律関係に入った第三者に対しては、民法94条2項を類推適用することにより、無効を主張することができないと解されていました。改正民法は、この点を明文化しています(本条2項)。

条文の位置付け