民法第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
昭和37年改正前民法第939条
  1. 放棄は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。
  2. 数人の相続人がある場合において、その一人が放棄をしたときは、その相続分は、他の相続人の相続分に応じてこれに帰属する。

条文の趣旨と解説

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人にならなかったものとみなされます。すなわち、相続人は、相続開始の時から、被相続人の一切の権利義務を承継しますが(896条)、相続放棄をすることによって、初めから相続財産の承継がなかったことになります。

なお、遺産分割の効力についても遡及効が定められていますが(民法909条本文)、同条ただし書において、第三者の権利を害することはできないと規定されています(民法909条ただし書)。これに対して、相続放棄の遡及効には、そのような制限は付されていません。

判例は、相続放棄の遡及効について絶対的効力を認め、「何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずる」と判示しています(最高裁昭和42年1月20日第二小法廷判決)。

条文の位置付け