借地借家法第12条
  1. 借地権設定者は、弁済期の到来した最後の二年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。
  2. 前項の先取特権は、地上権又は土地の賃貸借の登記をすることによって、その効力を保存する。
  3. 第一項の先取特権は、他の権利に対して優先する効力を有する。ただし、共益費用、不動産保存及び不動産工事の先取特権並びに地上権又は土地の賃貸借の登記より前に登記された質権及び抵当権には後れる。
  4. 前三項の規定は、転借地権者がその土地において所有する建物について準用する。
借地法(旧法)第14条
  1. 土地所有者又ハ賃貸人ハ弁済期ニ至リタル最後ノ2年分ノ地代又ハ借賃ニ付借地権者カ其ノ土地ニ於テ所有スル建物ノ上ニ先取特権ヲ有ス
  2. 前項ノ先取特権ハ地上権又ハ賃貸借ノ登記ヲ為スニ因リテ其ノ効力ヲ保存ス

条文の趣旨と解説

民法上、不動産の賃貸の先取特権が規定されており、不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関して、賃借人の動産について先取特権が認められています(民法312条)。また、地上権者が土地所有者に対して地代を支払わなければならない場合に、地代についても、不動産の賃貸の先取特権の規定が準用されます(民法266条2項)。
民法が定める土地の賃貸人の先取特権の目的物の範囲は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実に限られます(民法312条1項)。
借地借家法は、借地権設定者の利益をより保護するため、弁済期の到来した最後の2年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に、借地権設定者の先取特権を有することを認めました(本条1項)。

本条1項の先取特権の効力を保存するには、地上権(民法177条、不動産登記法3条2号、同法78条)又は土地の賃貸借(民法605条、不動産登記法3条8号、同法81条)の登記をすることを要します(本条2項)。

本条1項の先取特権は、他の権利に対して優先する効力を有します(本条3項本文)。ただし、共益費用の先取特権(民法306条1号、民法307条)、不動産保存の先取特権(民法325条1号、民法326条)及び不動産工事の先取特権(民法325条2号、民法327条)並びに地上権又は土地の賃貸借の登記より前に登記された質権(民法356条、不動産登記法3条6号)及び抵当権(民法369条、不動産登記法3条7号)には劣後します(本条3項ただし書)。

本条の先取特権に関する本条第1項から第3項までの規定は、転借地権者がその土地において所有する建物について準用されます(本条4項)。

条文の位置付け