賃貸人の共同相続人に対して、賃借権の確認を求める訴訟が必要的共同訴訟となるか否かについて、「必要的共同訴訟ではない」と判示しました。

判決文(抜粋)

最高裁昭和45年5月22日第二小法廷判決
 不動産賃貸人が死亡し、数名の者が共同してこれを相続した場合には、賃貸物を使用収益させるべき賃貸借契約上の債務を相続人ら各自が不可分に負担し、賃借人は、相続人の一人に対しても右債務の全部の履行を請求することができるものと解すべきである。したがつて、訴をもつて賃借権の確認を求める場合においても、共同相続人のうち争いのある者のみを相手方とすれば足り、争いのない者を相手方とする必要はなく、賃借人から賃貸人の共同相続人に対する賃借権確認の訴は必要的共同訴訟ではないと解するのが相当である。

前提知識と簡単な解説

相続の効力

相続は、被相続人の死亡によって開始し(民法882条)、相続人は、相続開始の時から、被相続人の一身に専属したものを除き(民法896条ただし書)、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。
相続人が数人あるときは、相続財産は、共同相続人の共有に属し(民法898条1項)、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します(民法899条)。この「共有」は、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解されています(最高裁昭和30年5月31日第三小法廷判決)。

多数当事者の債権及び債務

数人で所有権以外の財産権を有する場合については、法令に特別の定めがあるときを除き、準共有として、共有に関する規定が準用されます(民法264条)。しかし、債権及び債務については、多数当事者の債権及び債務に関する民法427条以下の規定が、民法264条にいう「特別の定め」に当たると解されています。
多数当事者の債権及び債務については、民法は、原則として、各債権者又は各債務者が、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負うものとされています(民法427条)。この例外として、不可分給付について数人の債務者があるときは、不可分債務として、債権者は、その債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができるとされています(民法430条において準用する民法436条)。