民法第550条
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
平成29年改正前民法第550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

条文の趣旨と解説

贈与は諾成・不要式の契約であり、口頭の意思表示のみで成立します。しかし、書面によらない贈与については、当事者がその効力を消滅させることができるとして、拘束力を弱めています(本条本文)。もっとも、履行の終わった部分については、一方的に解消することはできません(本条ただし書)。

「書面」の該当性

判例は、本条の趣旨について「贈与者が軽率に贈与することを予防し、かつ、贈与の意思を明確にすることを期するためである」とした上で、「贈与が書面によつてされたといえるためには、贈与の意思表示自体が書面によつていることを必要としないことはもちろん、書面が贈与の当事者間で作成されたこと、又は書面に無償の趣旨の文言が記載されていることも必要とせず、書面に贈与がされたことを確実に看取しうる程度の記載があれば足りる」と判示しています(最高裁昭和60年11月29日第二小法廷判決)。

平成29年民法(債権関係)改正

改正前550条は「撤回」との文言を用いていましたが、用語の統一を図るために、「解除」という文言に改められました。
「解除」との文言に改められたことによって、解除に関する総則的規定が適用されるのかが問題となります。しかし、550条が想定しているのは目的物の引渡し前の場面であるため、545条546条548条の適用はなく、また、贈与の無償性に鑑み、547条も適用されないと解されます(『一問一答民法(債権関係)改正』)。

条文の位置付け