民法第595条
  1. 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
  2. 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

条文の趣旨と解説

通常の必要費の負担

使用貸借において貸主は借主に使用収益させるという債務を負いますが、その内容は、借主による使用及び収益を容認するという消極的な債務に過ぎず、積極的に使用又は収益するのに適した状態に置く債務までは負いません。このような趣旨から、借用物の通常の必要費は、借主が負担します(1項)。

通常の必要費とは、目的物の現状を維持するために必要な修繕費などをいいます(山中康雄『新版注釈民法(15)』)。また、固定資産税などの公租公課についても、通常の必要費に属するとした裁判例があります(最高裁昭和36年1月27日第二小法廷判決、東京地裁平成9年1月30日判決)。

通常の必要費以外の費用

借主が通常でない必要費又は有益費を支出したときには、583条2項の規定に従い、通常でない必要費についてはその金額を、有益費については、価格の増加が現存する場合に限り、貸主の選択に従って、その支出した金額又は増加額の償還をさせることができます(2項)。

条文の位置付け