民法第466条の3
前条第1項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。この場合においては、同条第2項及び第3項の規定を準用する。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。
466条2項が譲渡制限特約付きの債権譲渡を有効としつつ、同3項において悪意又は重過失の譲受人に対して「履行を拒むことができ」または「譲渡人に対する弁済」「を対抗することができる」としています。これは、債務者が譲渡人に弁済した上で、譲渡人が受領した金銭を譲受人に引き渡すことによって、譲受人が債権を回収することを基本的に想定しているといえます。
しかし、譲渡人について破産手続開始の決定があった後に、債務者が譲渡人(破産管財人)に対して弁済すると、その金銭の引渡請求権は財団債権(破産法148条1項5号)として保護されるとしても、破産財団が財団債権の総額を弁済するのに足りない場合には、譲受人が全額の回収をすることができなくなってしまいます。
そこで、本条は、譲渡人について破産手続開始の決定があったとき、譲受人は、譲渡制限特約について悪意又は重過失であっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を供託させることができることを定めています(部会資料78B)。

本条の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければなりません(本条後段において準用する466条の2第2項)。また、供託された金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができます(本条後段において準用する466条の2第3項)。

条文の位置付け