民法第466条の6
  1. 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
  2. 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
  3. 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第1項)の規定を適用する。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。

改正前民法下において、判例は、将来発生する債権を目的とする債権譲渡契約も有効であるとし(最高裁平成11年1月29日第三小法廷判決)、目的とされた債権が将来発生したときには、特段の行為を要することなく当然に、当該債権を取得する、と判示していました(最高裁平成19年2月15日第一小法廷判決)。
改正民法は、この判例法理を明文化しています(本条1項及び同2項)。

譲渡制限の意思表示が付された場合

改正前民法においては、将来債権が譲渡された後に譲渡制限特約が付された場合については、規律が設けられておらず、債務者が譲渡禁止特約を譲受人に対抗することができるか否かについては、必ずしも見解が確立していない状況でした。
改正民法は、対抗要件(467条1項)の具備の時点を基準とし、対抗要件の具備時までに譲渡制限特約が付された場合には、譲受人は譲渡制限特約が付されたことを知っていたものとみなして、債務者は譲受人に対して譲渡制限特約の効力を対抗することができるものと規定しました(本条3項)。この理由として、債権が譲渡されていたことを知らない債務者からすれば譲渡制限特約によって自らの利益を確保する必要がある一方で、譲受人は、譲渡制限特約が付されるリスクがあることを考慮した上で取引に入ることが可能であると説明されています(部会資料74A)。
これに対して、対抗要件が具備された後に譲渡制限特約が付された場合には、債務者は譲受人に譲渡制限特約を対抗することができないこととなります。対抗要件の具備により将来債権譲渡の事実を知った債務者は、債権が譲渡されることを望まないのであれば、当該債権を発生させる取引をしないなどの方法をとることが可能であるから、この場合にまで譲渡制限特約の対抗を認める必要はないと考えられるからです(部会資料74A、同84-3)

条文の位置付け