- 民法第467条
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- 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
- 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
- 平成29年改正前民法第467条
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- 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
- 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
条文の趣旨と解説
債権譲渡は、譲渡人及び譲受人間の契約によって行われることから、債権譲渡に関与しない債務者又は第三者は債権譲渡の事実を知らないために不測の損害を受けるおそれがあります。そこで、民法は、以下のように、債権譲渡について債務者及び第三者を保護する方策を講じています。
債務者に対する対抗要件
譲受人が債務者に対して譲り受けた債権を主張するための要件(債務者対抗要件)は、譲渡人から債務者に対する通知又は債務者の承諾です(本条1項)。
債務者対抗要件としての通知
通知は、譲渡人がしなければなりません。
この通知は、債権譲渡契約から生じる譲渡人の義務であると解されており(中田裕康『債権総論』)、譲渡人が任意に通知をしない場合、譲受人は譲渡人に対して訴えをもって通知をするように請求することができます(大審院昭和15年12月20日判決)。
譲受人が、譲渡人から委任を受け、譲渡人の代理人として通知をすることはできますが(最高裁昭和46年3月25日第一小法廷判決)、債権者代位権(423条)により譲渡人に代位して通知をすることはできません(大審院昭和5年10月10日判決)。
債務者対抗要件としての承諾
債務者の承諾は、譲渡人又は譲受人のいずれにしてもよいとされています(大審院大正6年10年2日判決)。
第三者に対する対抗要件
第三者に対する対抗要件は、同一債権について二重譲渡又は譲渡と差押えが競合する場面において、両立しない権利関係に立った者の優劣を決定するものです。
第三者に対する対抗要件も、債務者対抗要件と同様に、譲渡人から債務者に対する通知又は債務者の承諾ですが(本条1項)、これらの通知又は承諾が確定日付のある証書によって行われる必要があります(本条2項)。
確定日付ある通知が競合する場合
債権の二重譲渡があり、いずれの譲渡についても確定日付ある通知がされた場合、「譲受人相互の間の優劣は、通知又は承諾に付された確定日附の先後によって定めるべきではなく、確定日附のある通知が債務者に到達した日時又は確定日附のある債務者の承諾の日時の先後によって決すべき」とされています(最高裁昭和49年3月7日第一小法廷判決)。
確定日付ある通知が同時に債務者に到達した場合は、「各譲受人は、第三債務者に対しそれぞれの譲受債権についてその全額の弁済を請求することができ、譲受人の一人から弁済の請求を受けた第三債務者は、他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由がない限り、単に同順位の譲受人が他に存在することを理由として弁済の責めを免れることはできない」とされています(最高裁昭和55年1月11日第三小法廷判決)。
平成29年民法改正
平成29年民法(債権関係)改正により、本条1項に「現に発生していない債権の譲渡を含む。」との文言が追加されました。これは、将来発生する債権の譲渡について第三者対抗要件を具備するためには、467条2項に定める方法によることができるとする判例法理(最高裁平成13年11月22日第一小法廷判決)を明文化したものです。