- 民法第97条
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- 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
- 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
- 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
- 平成29年改正前民法第97条
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- 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
- 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
条文の趣旨と解説
意思表示の効力の発生時期
意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じます(本条1項)。
なお、平成29年改正前民法97条1項は、「隔地者に対する意思表示」についてのみ効力の発生時期を定めており、隔地者ではない者に対する意思表示については規定していませんでした。しかし、改正前民法下における通説によれば、隔地者間でなくとも、意思表示が到達した時に発生すると考えられていたことから、改正民法97条1項では、同項の適用範囲を、隔地者に限らず、相手方がある意思表示一般に改められています。
到達の擬制
改正前民法下における裁判例では、意思表示の通知が相手方に直接受領されたとは言えない場合であっても、相手方の行為態様を考慮して、意思表示が到達したものと認める例がありました(最高裁平成10年6月11日第一小法廷判決等)。
そこで、平成29年民法改正では、このような裁判例を踏まえ、到達しなかったことの原因が相手方にあるときは到達したものとみなす旨の規定が新たに設けられました(本条2項)。
表意者の死亡、意思能力の喪失等
意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、意思表示の効力は影響を受けません(本条3項)。
条文の位置付け
- 民法
- 総則
- 法律行為
- 意思表示
- 民法第93条 – 心裡留保
- 民法第94条 – 虚偽表示
- 民法第95条 – 錯誤
- 民法第96条 – 詐欺又は強迫
- 民法第97条 – 意思表示の効力発生時期等
- 民法第98条 – 公示による意思表示
- 民法第98条の2 – 意思表示の受領能力
- 意思表示
- 法律行為
- 総則