- 民法第898条
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- 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
- 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
- 令和3年改正前民法第898条
- 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
条文の趣旨と解説
相続人は、相続開始と同時に被相続人の相続財産を承継しますが(896条)、相続人が数人いる場合には、遺産の帰属を確定させる遺産分割が行われるまでに、時間的な間隔が生じます。民法は、この相続開始時から遺産分割までにおける相続財産の法律関係につき、共同相続人の「共有に属する」と定めます(本条)。
従来、この「共有」の意義を、持分の処分を対抗できないと定める組合員の「共有」(676条1項)と酷似する性質を有する、いわゆる「合有」と解すべきではないかという議論がありました(中川善之助『相続法』)。
この点につき、判例は、「相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではない」と判示していました(最高裁昭和30年5月31日第三小法廷判決)。
上記判例によれば、遺産共有状態にある相続財産の管理に関する行為の規律は、民法249条以下に規定する共有に関する規律に従うこととなります。
令和3年民法・不動産登記法改正について
相続財産の管理につき、民法249条以下の共有に関する規律に従うとしても、共有に関する規定における「持分」が、法定相続分(又は指定相続分)を基準とするのか、具体的相続分を基準とするのかが、問題となります。
改正民法は、実際上具体的相続分を確定することは容易ではなく、具体的相続分を基準として用いることは困難であること等の理由から(『民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明』)、法定相続分又は指定相続分を基準とするものとしました(本条2項)。